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健康コラム

朝食断食の健康法 実践編

夕食は何を食べてもOK!これならできる「断食術」

■1食抜いても問題なし! 

  さて、ここからはみなさんにぜひ試していただきたい断食の実践編です。
とはいえ、1日3食をよく噛んで、腹八分目だけ食べ、運動・労働で十分に体を動かし、現在心身ともに健康で、健康診断等でもまったく異常のない方に関しては無理に断食を試みる必要はないと思います。そのような方はこれまで通り、自分に合った食生活を続けられるとよいでしょう。

 繰り返しになりますが、断食といっても大げさに考える必要はありません。自分にとって無理のない範囲で、できるだけ長く空腹状態をキープするだけで十分です。

 その第一歩として私がいつもお勧めしているやり方があります。
それは、朝食を抜いてみることです。

 はっきり言って、朝から食欲のない人は朝食を食べる必要などまったくありません。また、朝から食欲があったとしても、現在「メタボ」をはじめ種々の病気で悩んでいる方は、一度思い切って朝食を抜いてみてください。現代の日本人は「食べすぎ=腹十二分」の方が大半です。

だからこそ、ガンや糖尿病、高血圧、痛風、脳卒中、心筋梗塞、不妊などの病気や体調不良に悩まされているのです

 朝食を抜けば、腹十二分(3食)−腹四分(1食:朝食)=腹八分でちょうどよくなります。もちろん、昼食を抜いても夕食を抜いてもかまわないのですが、これまでさまざまな方々を診てきた経験からいうと、「朝食を抜く」のが最も断食生活を継続しやすい(ハードルが低い)と思います。

■朝食代わりに人参・リンゴジュース

 私がとくに朝食抜きをお勧めするのには、ちゃんとした理由があります。
というのも、朝は「吐く息が臭い」「目ヤニが多い」「鼻がつまる」「尿の色が濃い」など、排泄現象が活発な時間帯だからです。つまり、体ががんばって血をきれいにしている(血の汚れを排泄している)ということです。

 寝ている時は誰もが「断食」をしています。だから朝起きた時は排泄現象が活発なのです。ご存じの通り、朝食は英語でブレックファスト(Breakfast)と言います。これはFast(断食する)をBreak(やめる)という意味です。

 せっかく寝ながら「断食」し続けてきたのですから、それを利用してもう少し(昼食までの数時間)だけ「断食」を継続しない手はありません。朝食を抜く代わりにぜひとも飲んでいただきたいのが、人参・リンゴジュースです。

 私は1979(昭和54)年、スイスのビルヒャー・ベンナー病院でこの人参・リンゴジュース療法を学んできました。ベンナー病院は1897年にビルヒャー・ベンナー博士という方が開設された病院です。ヨーロッパをはじめ世界中から集まってくる難病・奇病の患者を、食事療法を中心とする自然治癒療法で治療していました。

 肉・卵・牛乳・バターなどは一切使用されず、動物性の食物はヨーグルトだけ。他に黒パン・ジャガ芋・ナッツ・生野菜・果物・ハチミツ・岩塩など自然の素材を用いて調理したメニューを提供していました。

そこで毎朝必ず飲まないといけなかったのが、人参2本、リンゴ1個で作られた生のジュースです。私が当時の院長リーヒティ・ブラシュ博士(ベンナー博士の姪)に「なぜ人参・リンゴジュースはそんなに体によいのですか?」と尋ねたところ、

「人間の健康に必要なビタミン(約30種)、ミネラル(約100種)をすべて含んでいるから」という答えが返ってきました。

 米国農務省は以前「我々現代文明人は『栄養過剰で栄養不足』の病気にかかっている」と発表したことがあります。タンパク質・脂質・糖の三大栄養素を摂りすぎている一方で、それらが体内で利用されるために必要なビタミンやミネラル類は不足しているという意味です。

 ビタミン・ミネラルは毎日約130種類の必要十分量を摂取しないと、1種類不足しただけでも図表9にあるような病気になりやすくなります。1982年には同じくアメリカで「ガンを防ぐにはビタミンA・C・Eをしっかり摂る必要がある。それには人参が一番大切だ」という発表がなされました。

 さらに1990年代にはアメリカの国立ガン研究所がガン予防効果の可能性のある約40種類の食物を、重要度の度合いによりピラミッド方式で示しているデザイナー・フーズ・プログラムを発表しましたが、その最上段にはニンニク・キャベツ・生姜・大豆・人参・セロリが入っています。 そんな薬効あらたかな「人参」と、 “An apple a day keeps the doctor away.”(1日1個のリンゴは医者を遠ざける) とイギリスで言われてきた「リンゴ」から作られる人参・リンゴジュースの健康増進・病気治癒効果はすばらしいものがあります。

 作り方は簡単です。 ①人参2本とリンゴ1個を水で洗う ②皮をむかずにジューサーで生ジュースを作る これでコップ約2杯半の生ジュースができるので、ぜひ朝食代わりに飲んでみてください。

■生姜をうまく使って断食の効率アップ

 人参・リンゴジュースと合わせてもう1つお勧めしたいのが生姜紅茶です。こちらも作り方はいたって簡単。生姜をすりおろして(粉末生姜でも可)熱い紅茶に入れ、ハチミツまたは黒糖を加えれば生姜紅茶の完成です。

 生姜の薬効の主役はジンゲロン(zingeron)、ギンゲロール(gingerol)、ショウガオール(shogaol)などの辛味成分です。

 そして、この他にも全部で約400種類にも及ぶファイトケミカル(植物性化学物質)の薬理作用と相乗して、次のような効果があります。

①血管を拡張して血行をよくし、体を温める。
②血小板の凝縮力を弱めて、血栓を予防する。
③血圧を下げる。
④脳の血流をよくして、抑うつ気分をとる。
⑤食中毒菌や肺炎球菌を殺す。
⑥白血球の働きをよくして免疫力を高める。
⑦発汗・解熱・去きょ痰たん・鎮ちん咳がい作用を発揮する。
⑧痛みを軽減する。
⑨消化液の分泌をよくして、消化を助ける。
⑩副腎髄質からアドレナリンの分泌を促して気分を高める。
⑪「アポトーシス(ガン細胞の自殺)」を促す。
⑫血中コレステロールを低下させる。
⑬排尿を促し、むくみや水太りを改善する。
⑭糖や脂肪の燃焼を促進する。
⑮めまい・耳鳴り・吐き気に効く。
⑯性能力を増強する。

 ちなみに、英語の”ginger”には「生姜」や「生姜で味付けする」という意味の他にも、

 名詞:元気、刺激、活力、意気、軒昂、気骨、ピリッとしたところ
動詞:活気づける、鼓舞する

 という意味があります。

 きっとイギリス人も昔から生姜の効能をよく知っていたのでしょう。
また、生姜は我々医師が使う医療用漢方薬約150種のうち約70%に含まれていて、「生姜なしには漢方は成り立たない」と言われるほどの薬効があります。

 生姜にはこれだけすごい力があるわけですから、朝の生姜紅茶だけでなく、昼・夕の味噌汁・納豆・豆腐・煮物・うどん・そばなどにすりおろし生姜を「旨い!」と思える量だけ入れて食べる習慣を作ってみてください。
「断食」に加えてそんな「生姜三ざん昧まいの生活」をされると、なお健康によいでしょう。

■昼・夕食は何を食べる?

 朝食を人参・リンゴジュースや生姜紅茶ですませたら、次は昼食です。
昼食はそば・うどんに七味唐辛子やネギ、すりおろし生姜をふんだんにかけて軽く食べるか、パスタやピザにタバスコをかけて食べるのがよいでしょう。
七味唐辛子やタバスコに含まれるカプサイシン、ネギの硫化アリル、生姜のジンゲロン、ショウガオールは血管を拡張して血流をよくし、体を温めて午後の活動の効率を高めてくれます。なかでも「そば」は8種類の必須アミノ酸を含む優秀なタンパク質、動脈硬化を防ぐ植物性脂肪、エネルギー源となる糖分、ほとんどのミネラル、ビタミンを含む「完全栄養食」なのでとくにお勧めです。

 さて、いよいよ夕食ですが、夕食はアルコールを含めて何を食べてもかまいません。この朝食抜き断食法を私は勝手に「石原式基本食」と呼んでいます。私はこれまで上梓した300冊以上の拙著で例外なくこの石原式基本食を勧めています。そして、それを実践された読者の方から

「半年で体重が15㎏減り、ウエストが20㎝縮まった」
「血圧・コレステロール値が正常値になった」
「糖尿病がよくなった」
「便秘が治った」
「生理痛や頭痛が軽くなった」
「憂うつな気分がなくなった」

 など、数えきれないほどの感謝の手紙をいただきました。

 もちろん、さまざまな事情から断食(朝食抜き)を実践するのが難しい方もいらっしゃると思います。そのような方は私の提案通りのやり方をする必要はまったくありません。

 ただ、1つだけ覚えておいていただきたいのは、食事は質よりも量(の少なさ)だということです。食べる量が少なければ、一般的に「体によくない」と言われている食物でも、胃腸が十二分に消化してくれます。

 できた老廃物も肝臓・腎臓・白血球がしっかり解毒してくれます。とにかく無理のない範囲で、ご自身が「調子がよい」と感じられる方法で少食を心がけてください。

■空腹感に耐えられなくなったら

 もし石原式基本食を実践していて空腹感に耐えられなくなったら、チョコレートや黒糖などをつまむか、黒糖入りの生姜紅茶を飲んでみてください。

 よく勘違いされがちなのですが、「空腹感」とは胃腸が空になった時の感覚ではありません。血糖値が下がった時に脳の空腹中枢が感じる感覚です。
なので、チョコレート、アメ、黒糖などで血糖値が上がると、すぐに空腹感はなくなります。

 断食では「空腹状態をキープする」ことは大切ですが、「空腹感をキープする」ことは重要ではありません。

 もっとも、空腹感を味わうことによって断食をしている実感(やりがい)を得られる方もいらっしゃるでしょうから、空腹感とうまく付き合いながら断食(空腹状態をキープ)してみてください。

 暴飲暴食をしてしまった時、風邪などのちょっとした病気にかかり体調不良の時、なんとなく気分がすぐれない時、食欲がわかない時などは、断食を試してみる絶好のチャンスです。

 まずは「1食抜いてみる」ことから気軽に断食にチャレンジしてみてください。もちろんダイエット目的でもかまいません。
きっと予想以上の早さで結果(体調の回復、体重の減少)が得られるかと思います。

■朝昼断食に挑戦してみよう

 先ほども言った通り、石原式基本食を実践するとほとんどの人が「頗すこぶる」つきの好調になるのですが、万が一、やってみて好調とも感じず、不調を感じるようであれば、すぐに中止して元の食事に戻してください。

 反対に「さらに体重を減らしたい」とか「さらに体調をよくしたい」と思われる方は、朝食だけでなく昼食も人参・リンゴジュースか生姜紅茶(どちらを飲んでもOK)に置き換え、夕食だけ食べる「朝昼断食」に挑戦してみてください。

 別に「毎日やるんだ!」と心に決めなくてもいいのです。昼間は忙しくて昼食を食べる時間がない時だけやってみる、といった気軽で臨機応変なスタンスでの挑戦でもかまいません。ただし、それを継続する場合は、「体調が頗るよいこと」が絶対条件です。

■1日断食に挑戦してみよう

 先に述べた通り、私は毎週月曜日には、人参・リンゴジュースを朝・昼・夕にコップ3杯ずつ飲み、途中空腹を感じたら黒糖入りの生姜湯を飲むという「1日断食」をここ5~6年続けています。

 また、伊豆の断食施設でも実際にさまざまな方々が体験されているので、その効果と安全性は確実だと自信をもって言えるのですが、読者のみなさんはいきなり「1日断食(ジュース断食)」をするのではなく、まずは「石原式基本食(朝だけ断食)」から始めてみてください。

 石原式基本食を1~2週間続けて体調がよいことを確認し、それに慣れてきたら週1~2回だけ「朝昼断食」をする。その生活を2~3週間ほど続けて、体調がよいことを確認してからいよいよ「1日断食」へ、というステップで実践していくのが理想です。

 1日断食は、たとえばこんなメニューで行います。

朝 :人参・リンゴジュースをコップ2・5杯(生姜紅茶をコップ1杯加えても可)

10時:生姜紅茶をコップ1~2杯

昼 :人参・リンゴジュースをコップ2・5杯(生姜紅茶をコップ1杯加えても可)

15時:生姜紅茶をコップ1~2杯

夕 :人参・リンゴジュースをコップ2・5杯(生姜紅茶をコップ1杯加えても可)

通常はあり得ないと思いますが、1日断食の途中でめまい・ふらつき・倦怠感などの低血糖症状が出た時には、生姜紅茶(黒糖またはハチミツ入り)を飲むか、黒アメを食べてください。

 また、喉が渇いたらそのつど、お茶、生姜紅茶、ハーブティなどで水分補給してください。

■断食明けの食物には注意する

 数日~1週間の断食後にいきなり普通食を食べると、嘔吐や下痢など名状しがたい不快感に見舞われます。そのため玄米の重おも湯ゆ(これにプラス梅干し・味噌汁の汁のみ・しらすおろし)を朝夕の2回、翌日が玄米のお粥かゆ(これにプラス梅干し、味噌汁、しらすおろし、納豆)を朝夕2回……というふうに徐々に普通食に戻していきます。

 これを「補食」と言います。断食明けはこの補食に何を選ぶかが重要です。1日断食後の翌朝の朝食(補食)は、

・玄米または白米のお粥:茶碗7~8分目
・梅干し:1~2個
・しらすおろし:1杯
・味噌汁(具は豆腐とワカメ):1杯

 をよく噛んで食べるようにしてください。これはあくまでもメニューの一例なので、この通りの食事内容でなくてもいいのですが、食事の質・量はこれを参考にしてください。

 そして、その日の昼食・夕食は腹七、八分目に軽くすませ、なるべく脂っこいものは避けましょう。

 こう聞くとなんとなく物足りないように思えるかもしれませんが、1日断食明けの食事(補食)の美味しさは、経験しなければわからない、名状しがたいものがあります。

 どんな高級料理と比べてもご飯、味噌汁、しらすおろしなどの粗食を感動的に美味しく味わえることでしょう。まさに「空腹は最高のスパイス」です。そして、その美味しさを感じた時こそ、いかに日頃食べすぎていたか、食物への感謝が足りなかったかを悟ることになるのです。

 ちなみに、ここで紹介した「1食~1日断食」を行っている場合でも、常用薬については普通に服用してもらってかまいません。ただし、空腹時に経口糖尿病薬やインスリンを服用・注射するのは、低血糖症状を起こす可能性があるので危険です。それらを使用している方は、そもそも断食を行える状況かどうか、主治医とよく相談してください。

『ちょい空腹がもたらすすごい力』(著:石原結實)より構成〉

 

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